
代 淳一(だい じゅんいち)さん
1997年にスタートしたフジロックも、今年で11回目。フェス文化も定着した今では、いろいろなタイプの人たちが参加し、苗場で楽しい3日間を過ごしている。しかし費用や交通手段、宿泊など、大人にとっては問題ない点が、10代の人たちにとって壁になることもある。今回紹介する代 淳一(だい じゅんいち)さん(20歳)は、2005年にフジロックに初参加。当時10代だった彼がどのようにしてフジロックに参加したのか、いろいろと話を聞いた。
まず最初に、フジロックをどこで・どのような形で知ったのだろうか。
「実は初めて行った野外フェスは2004年のROCK IN JAPAN FESTIVALだったんですよ。最初はフェスがどんなものかわからなかったので、ネットの情報を頼りにいろいろ準備して行きました。好きなバンドもたくさん出ていたし、野外フェスの空気を肌で感じることができて、すごく楽しかったですね。フジロックはそのあと、行った人のレポートをネットで読んで、いろいろ調べていくうちにどういうものか知りました」
2005年、彼が18歳のときに初めてのフジロック参加を果たす。
「最初フジに行くつもりはなくて、もう一度ジャパンフェスに行こうと準備してたんです。でもネットで『フジは楽しい、フジは特別』という意見を目にするうちに、どんどん興味が湧いていきました。そこにTHE HIGH-LOWSがフジ初日に出演することが決まったんです。僕の母親は彼らの大ファンで、冗談半分で『フジロックに出るよ、お金かかるから連れてってよ』みたいなことを言ったら、いいよということになったんですよ(笑)。それで、母親と母の友だちと僕の3人で1日だけ行きました」
よくフジロックに行ったことがない人から「フジは他のフェスと比べて、ちょっと敷居の高いイメージがある」という話を聞く。彼も本格的に行くというよりは、どんなものか体験しに行く程度の気持ちで臨んだという。
「聞いていたほど敷居が高いとは思いませんでしたね。確かに山だからホテルもそんなにないし、ちょっと気合い入れて行ったんですけど、特にトラブルもなかったですよ」
フジロックは他のフェスと比較して、どんな特徴があるのだろうか。
「単純にどっちのほうが良いとかいう問題ではないんですけど、フジのほうが日常からより離れていると感じました。1日だけでしたけど貴重な体験ができたし、また行きたいなぁと思いましたね」
初めて訪れたフジロックだったが、特に不便を感じた面はなかったという。
「当日は他の日と比べれば天気にも恵まれてたし、ラッキーでした。フジロックは山だから天気も変わりやすいし、雨が降ったら足下がドロドロになるとか、会場まで遠いとか、ステージ間の距離があるとか、トイレに並ぶとか、そういうレベルではいろいろあるけど、それを『嫌なこと』と感じるかというと、そんなことはなかったですね」
フェスにはスケジュールをキッチリ決めて楽しむ人もいれば、特に計画を立てずにいろいろ観る人もいる。彼の場合はどうだったのだろう。
「最初に行ったときは、やや前者に近かったですね。どのステージを観るかは事前に決めていたんですけど、結局ご飯食べたりトイレに行ったりアーティストグッズを買うのに並んでいたりすると、予定どおりにはいかないですよね。ちょっと悔しかったりはするけど、『ここで食べたものが美味しかった』とか『他のステージで観たライブが面白かった』というところで、全部帳消しになって、そんなに気にならなくなります」
18歳で初のフジロックを体験した代さんは、2006年のフジロックにも参加。この年は念願の3日間参加を果たしている。
「もう無条件で3日間行こうと決めてました。出演者が発表される前でしたけど、あれだけステージがあって、150組前後もの出演者がいたら、1日に複数は観たいと思えるアーティストがいるはずだから、その辺は心配してなかったし、特に迷いもしませんでしたね」
この年、彼はたったひとりで3日間参加している。
「誰かと一緒に行こうという発想はまったくなかったですね。宿は苗場の地元にある体育館に、素泊まりでした。ネットで調べたら会場から近いし安かったので、即決でした。キャンプサイトも会場から近いけど、場合によってはかなり山の上のほうまで登らないといけなくなると聞いてるし、体育館は同じくらい近いうえに布団も使えるし、近くの民宿の風呂にも入れるんです。冷水シャワーを浴びなくても済むので(笑)、意外と快適ですよ。交通手段は、行きは金曜の朝に新幹線の自由席で、帰りは月曜の朝まで過ごして、それから普通電車でゆっくりと乗り継いで帰りました」
1日のみ参加した前の年とは違い、2年目・3日間参加ということで、もっとディープな部分が見えてきた。
「さすがに3日間もいると、ステージの配置や道のつながりも頭に入っているし、移動の時間も把握できてましたね。1年目はただ空気感がいいなと感じただけだったのが、2年目は3日いて、言葉で言い表すのは難しいんですけど……その空気感の正体がはっきり見えた気がしました。とにかく『楽しい』、いや、『楽しい』というよりも『すばらしい』『Wonderful』という言葉のほうがピッタリですね。良いことも不便なことも全部ひっくるめて、すごくいい時間を過ごせたなぁと思います」
3日間過ごして不便に感じたことも聞いてみたが、意外な言葉が返ってきた。
「いろいろ思い返してみようとするんですけど、目に見えて悪いところとか、文句を言いたいところというのは、結局ひとつもないんですよ。今のままでもぜんぜん問題ないんですけど、強いて挙げるならば、ORANGE COURTのトイレの場所ですかね。あそこは雨が降ると並んでる場所の足下の状態が酷くなるので、トイレの位置を見直してもらえると嬉しいです」
ひとりで3日間参加した代さん。これまでに友だちをフジロックに誘って一緒に行こうと思ったことはないという。
「フジロックの良さを友だちに情熱的に伝えようとか誘おうということはないですね。フジはただ楽しいだけじゃなくて、いろんなことを感じたり考えたりすることができる場で、僕にとって本当に貴重な体験なんですよ。ただ楽しいだけじゃなく、いろんな体験が自分の中にガーッと入ってくる。それは他の誰かとは共有できない、もっと個人的な体験なんじゃないかと思うんですよ。だから誰かを誘うんじゃなくて、ひとりで行こうと考えるのかもしれませんね」
ちなみに今のところ、今年のフジロックへ行く予定はないという。
「もう行きたくないとかじゃなくて、単純に他のフェスとの兼ね合いとかお金の問題ですね。もっと他のフェスも観てみたいし、その中で改めてフジロックの良さについてもう一度見直してみようと思ってます」





コメント